サルブン  
2003+11
 

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コーヒー豆を求めてJRの高架下を高円寺方面に向かって歩くオレの前を
女子中学生の二人組が同じ方向に歩いている。
いや、高校生?わかんないからどっちでもいい。
とにかく彼女達の左側が足下に落ちてる空き缶を蹴った。
カラカリョカカーンと高架下に音をひびかせてカンは転がっていき
前からきたサラリーマンのおじさんの足下にぶつかった。
きゃあ、すみませーん!と言いつつおじさんとすれ違う二人組。
右側がまたカンを蹴った。
斜めに転がっていったカンは自転車を押してるおばちゃんの足下に。
あっ!すっみませえん!!
ふたりは恥ずかしそうな、しかし笑いを含んだ高揚した声であやまりながら
おばちゃんの脇をすり抜ける。
そして最初に空きカンを蹴った左側が
ふたたび蹴る。
三度擦過音をひびかせて空きカンは
前方からくるおじさんの足下に軽やかにヒットするのであった。
いやあ〜〜〜、ごめんなさいぃ〜!
とあわてて肩をすくめて駆け抜けるカン蹴り二人組。
わざとではないにしても
蹴るたびに確実に獲物を仕留めてきた。
さすがにもはや蹴るまい、と思われたカンを
だがしかし、ためらうことなく
さらに蹴る体勢に入る右側女子。
蹴った。
そしておばちゃんが散歩させてる犬の足下にガラガラぶつかっていくカン。
叫ぶ二人組。
「やだあ!なんかこの缶、呪われてるぅ!」

(いやそれはちがう)
とその時その場にいた通行人のココロがひとつになった。